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ウイメンズセンター婦人科

骨盤臓器脱とは何ですか?その検査と治療について

骨盤臓器脱(Pelvic Organ Prolapse、POP)とは?

骨盤内の臓器(主に子宮、膀胱、直腸)が、その正常な位置から下方に移動し、骨盤底部から腟内に突出、あるいは腟外に脱出する状態を指します。この状態は、骨盤底部の筋肉や結合組織が弱くなったり、損傷したりすることなどで引き起こされます。

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https://urogyne.jp/prolapse/cystocele-description/より引用

骨盤臓器脱の主な原因とリスク要因

妊娠と分娩

妊娠と分娩(特に経腟分娩)は、骨盤底部の筋肉や組織に圧力をかけることがあり、骨盤臓器脱のリスクを増加させる要因となります。

加齢

加齢に伴って骨盤底部の筋肉や結合組織が弱くなり、骨盤臓器脱のリスクが高まります。

慢性的な腹圧の増加

慢性的な便秘、持続的な咳、過度な体重や肥満などが腹圧を高め、骨盤臓器脱のリスクを増加させる可能性があります。

遺伝的要因

家族歴に骨盤臓器脱がある場合は、遺伝的要因が関与している可能性があります。

骨盤臓器脱の症状

腟内からの臓器の脱出

最も一般的な症状で、子宮、膀胱、直腸などが腟内に突出、あるいは腟外に脱出します。

骨盤底部の重圧感や不快感

骨盤底部に圧力感や重みを感じることがあります。

腹痛や腰痛

骨盤臓器脱の症状として、腹痛や腰痛があらわれることがあります。

排尿障害や尿失禁

膀胱が影響を受けることで、排尿障害や尿失禁を生じることがあります。

排便障害

骨盤臓器脱が直腸に影響を与え、排便障害や便秘を生じることがあります。

骨盤臓器脱は、「生活の質(Quality of Life)」に関わる重要な健康問題であり、適切な治療が必要です。治療法には物理療法、薬物療法、手術などがあり、あなたの症状や骨盤臓器脱の程度、健康状態に応じて選択されます。

骨盤臓器脱の治療

物理療法

特別な運動やエクササイズを通じて、骨盤底の筋肉を強化し、臓器を正しい位置にサポートする方法です。これには「骨盤底筋群トレーニング」が含まれます。骨盤底筋群トレーニングは、特定の筋肉を鍛えるために行われ、通常は「ケーゲル運動」とも呼ばれます。これらの筋肉を強化することで、骨盤内の臓器の脱出を防ぎ、症状を軽減できます。

ペッサリー

ペッサリーは、骨盤臓器(子宮、膀胱、直腸など)が正常な位置に戻るのを助けるために、腟内に挿入される器具で、骨盤臓器脱の治療に使用される最も一般的な治療法の一つです。ぺッサリーは、骨盤臓器脱の症状が比較的軽度または中等度の場合に有効であり、手術を避けたい方、あるいは合併症により手術が困難な場合に、選択肢として提供されます。ペッサリーの種類はさまざまで、形状やサイズが異なります。ペッサリーは通常、医師によって適切なタイプとサイズが選択され、腟内の適切な位置に留置されます。挿入後は定期的に医師の診察を受ける必要があります。ただし、ペッサリーは保存的あるいは一時的な解決策であるため、持続的な効果を求める場合には、他の治療法(手術など)も検討されます。

薬物療法

骨盤臓器脱の症状を軽減するために、一時的に使用されることがあります。これには、炎症を軽減する抗炎症薬、排尿障害を改善する薬物、ホルモン療法などが含まれます。薬物療法は通常、一時的な症状の緩和を目的として行われ、根本的な治療ではありません。

手術

手術は、骨盤臓器脱の症状が重度で、他の治療法が効果的でない場合に検討されます。子宮脱の場合は、子宮摘出手術(腟式あるいは腹腔鏡による子宮の摘出)が行われることがあります。膀胱脱や直腸脱の場合は、腟壁を縫縮するような骨盤底の修復手術が行われたり、メッシュなどを用いて組織を補強し臓器の位置を修正します。手術にはある程度のリスクが伴うため、適応は慎重に検討し、最適な治療法を選択する必要があります。

治療法の選択には、あなたの症状や骨盤臓器脱の程度、個人の健康状態に依存します。骨盤臓器脱の治療の決定は医師との相談に基づいて行われ、あなたのニーズや状況に合わせてカスタマイズされます。一般的に、最初に物理療法や薬物療法から始められ、効果が不十分な場合に手術が検討されます。

レーザーを用いた新たな治療法

骨盤臓器脱の治療において、レーザーを用いた新たな治療法も一部では使用されています。レーザー治療は、組織の修復や再建、症状の軽減を目的として行われることがあります。以下は、骨盤臓器脱の治療におけるレーザーを用いたアプローチに関するいくつかの情報です。

粘膜の強化

骨盤臓器脱に関連する症状のうち、尿失禁や腟の脱出などに対処するために、レーザーが使用されることがあります。レーザーを用いて、腟壁の粘膜を強化し、症状を改善する試みが行われています。

血流改善

レーザー治療は、血流を改善する効果があるとされており、骨盤臓器脱の治療において、組織の血液供給を改善するために使用されることがあります。

ただし、治療の選択肢は個々のケースによって異なりますので、レーザー治療を含むオプションについては、診察を受けた医師と相談することが重要です。医師はあなたの具体的な症状や状態に基づいて最適な治療プランを提案し、適切な治療法を選択します。

必要な検査

骨盤臓器脱が疑われる場合、医師は以下のような検査を行うことがあります。

骨盤内検査(内診・腹部触診)
目的

腹部、外陰、腟、子宮、卵巣の健康状態を確認します。

内容

腹部を触診にて診察し、緊急対応の必要がないか確認します。外陰部の状態を観察し、次に腟鏡を用いて腟内と子宮頸部を調べます。少し違和感はあるかもしれませんが、通常、痛みは伴いません。

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超音波検査(エコー検査とも呼ばれます)
目的

内診ではわからない、子宮内部や卵巣の形態上の異常がないか確認します。子宮や卵巣の異常、卵巣の腫れや嚢胞、子宮内膜の状態などを評価します。

内容

腹部また腟内に超音波プローブをあて、内部の画像を取得します。

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血液検査・尿検査
目的

炎症や感染の有無、泌尿器科疾患の鑑別を調べるためなどに、血液や尿検査が行われることがあります。

CT検査(必要時)

CT検査は、身体の内部を詳細に見るための特殊なX線検査です。

検査の前に、過去の造影剤アレルギー反応の有無や、妊娠の可能性について医師に伝えてください。

検査の流れ
  • 準備: 検査用ガウンに着替え、患者は検査ベッドに横たわります。
    検査の前に、過去の造影剤アレルギー反応の有無、妊娠の可能性について医師に伝えてください。
  • 検査装置: CTスキャン装置は円筒状の構造で、患者を囲むようになっています。
  • 撮影: 装置から微小なX線ビームを体に照射し、複数のアングルから撮影し画像を取得します。
    検査中は、患者さんは動かないように静止していてください。
  • 検査時間: 検査は通常10分から20分程度かかります。
検査の安全性

CT検査は非常に安全でリスクは最小限です。しかし放射線を使用するために、妊娠の可能性がある方や妊婦さん、子供さんに対しては注意が必要です。

MRI検査(必要時)

MRI検査は、磁気を用いた画像検査です。

検査の前に、過去の造影剤アレルギー反応の有無、妊娠の可能性について医師に伝えてください。

目的

超音波検査以上に、子宮や卵巣の形態を詳細に調べたい場合に行います。

内容

約20から30分かかります。

  • ペースメーカーを装着されている方、手術を受けて金属・クリップなどが体内に残っている方は、MRI検査を受けることができない場合があります。検査前に医師にご相談ください。
子宮頸がん・体がん検査(スメア)
目的

子宮頸部の細胞を採取し、異常がないか調べます。万が一  異常がみつかった場合には、骨盤臓器脱よりもがんの治療が優先  されます。

内容

子宮頸部から細胞をブラシで軽くこすり取り、顕微鏡で検査します。悪性腫瘍(がん)の有無を確認します。年齢や症状よっては、体がん検査も追加します。

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患者さんへのアドバイス

検査前には、医師に現在の症状や既往歴、服用中の薬などについて詳しく伝えてください。

検査中はリラックスし、不安や疑問があれば、遠慮なく医師や看護師に相談してください。

検査結果に基づいて、医師から提案される治療法や、次のステップについての説明を受けます。

検査結果の理解や治療選択においては、疑問や懸念を医師と共有し、納得のいく形で進めることが重要です。

検査後のフォローアップ

結果の確認

検査結果は通常、当日から2-3週間で判明します。結果に基づいて、必要な治療やフォローアップが行われます。

治療計画

結果によっては、薬物療法、ライフスタイルの変更など、さまざまな治療オプションが提案されることがあります。

定期的なフォローアップ

特に慢性的な疾患や継続的な治療が必要な場合、定期的な診察が必要になることがあります。

不安や心配に対して

骨盤臓器脱は必ずしも深刻なものばかりではありませんが、女性の快適な日常生活やQOLの維持には大きな影響を与えます。定期的な健康チェックと適切な検査を通じて、適切な治療に繋げることができます。患者さん自身の健康に対する意識と医師とのコミュニケーションが、最善の結果をもたらす鍵です。

骨盤底筋体操をやってみましょう[図]

初診の方へ

ご来院頂く前にご自身の症状に合わせてご一読ください。