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診療科・部門

ボツリヌス療法

脳疾患(外傷)、脊髄疾患(外傷)後の「痙縮」に対するボツリヌス療法

診療の内容

病気やケガで脳や脊髄が損傷を受けるとしばしば手足の運動がスムーズに行えなくなります。重度の場合は完全に麻痺してしまい、自分の意思で動かすことが出来ません。軽症~中等症ではある程度、関節を動かすことができますが、動作としては不完全なものになります。脳からの指令が目的の筋に届かず、その部分が動かないことがひとつの要因です。

しかし脳や脊髄の損傷に起因する中枢性運動障害では、さらに動作における筋の収縮、弛緩の調整不良が生じてしまいます。本来、自分の意志で肘を曲げようとすれば肘の屈曲筋が収縮するのは当然ですが、同時に肘を伸ばす伸展筋が弛緩しなくてはなりません。これはスムーズな肘屈曲動作を行うために無意識下で制御された必須の神経メカニズムです。中枢性運動障害ではその調整機構がうまく働かないため、意図した動作を妨害する筋が収縮したり、本来の目的筋であっても度を越えて過剰収縮してしまうことがあります。これによって、歩行、日常生活動作、介助動作が阻害されますが、患者さん本人の意思とは関係なく勝手に生じてしまうものです。

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脳出血後の左麻痺。

裸足の歩行でみると母趾や他の足趾が過剰に曲がっています。さらに足底面が右を向いてしまうので母趾や足底が床に着きません。

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脳梗塞後の右下肢の不全麻痺。

上の方と似ていますが、足関節を底屈(ペダルを踏む動作)させる筋が過剰収縮してしまい、踵が床に着きません。母趾は床に接地していますが、小趾側の3趾は屈曲が強く爪が床に着いてしまっています。

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脳外傷後の左上肢の完全麻痺。

自分では肘の曲げ伸ばしができません。検者が肘を伸ばしているところですが、それに逆らうように(本来弛緩しているべき)屈曲筋が収縮してしまっています(矢印)。そのため、検者がかなり力を入れないと肘が伸びません。長期間の経過でこれらの筋の長さが短縮してしまうと、他動的にも肘を伸ばせなくなってしまいます。

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脳梗塞後の左上肢の完全麻痺。

自分では手関節や指を動かす事ができません。検者が手首を背屈させようとしてもそれに抵抗するように手首を掌屈(図では下に曲げようと)する筋が過剰収縮しています。すでに背屈方向への可動域制限が見られています。

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脳出血後の左上肢の完全麻痺。

検者が手指を伸ばそうとしていますが、手指屈曲筋の収縮によってスムーズに指の伸展ができません。長期の経過で手指伸展が困難となり常に手を握ったままになると、手掌面での手指衛生が保てなくなってしまう可能性があります。さらに母指は手掌面方向に向いており、他人がそうしようとしても手のひらを平らにするのが困難です。

以上はいずれも本来の動作を担う筋の過剰な筋収縮または目的動作を妨害する他の筋の不要な収縮によるものです。これを痙縮(けいしゅく)と言います。ここでお示しした筋、動作以外にも様々な部位で出現します。ボツリヌス療法はこれらの上下肢筋に対して薬液を注入し、その筋収縮を弱めます。これによって筋が軟らかくなる、関節の動きや歩行がよりスムーズになる、痛みやこわばりの不快感が軽減する、介助が楽になる、などの効果が期待できます。

施注にあたっては、超音波や電気刺激を併用して、目的の筋の位置を確かめながら行います。筋の数にもよりますが、30分~1時間程度を要します。通常の生活範囲であれば施注前後に特段の生活制限や準備は不要です。ただし、施注した当日だけは入浴をお控え下さい。効果には個人差がありますが、通常数か月持続します。その後、必要に応じて施注を繰り返しますが、繰り返し施注することで蓄積効果がみられることもあります。

まずはお気軽に受診ください。受診に当たっては、病状の経過がわかる紹介状を用意いただき、電話で予約をお取りください。ご希望を聞いたうえでボツリヌス療法の適応があるか判断します。ボツリヌス療法の適応があれば、後日、施注を行います。なお、この治療法では麻痺している筋を収縮させることはできず、運動麻痺を回復させるものではありません。

担当医師紹介

富倉[写真]
豊倉 穣とよくら みのる
出身大学

東海大学医学部

学会・認定資格
  • 日本高次脳機能障害学会評議員
  • 日本専門医機構リハビリテーション専門医
  • 日本リハビリテーション医学会指導医
  • 日本脳卒中学会専門医
  • 日本義肢装具学会専門医
  • 日本臨床神経生理学会専門医(筋電図)
医師コメント

高次脳機能障害は見えない障害であり、他人には理解してもらえないことが少なくありません。これによってご本人やご家族、周囲の方が辛い思いを強いられてしまうことがあります。当外来が何らかのお役に立てれば、と考えています。高次脳機能障害の診断がなされていない方、これから社会参加を考えている方、復学・職、就学・労を考えている方も含め、お気軽に来院ください。入院中に失語症の言語療法を受けたが、退院後も外来でリハビリテーションを継続したい、という方にも対応いたします。

認定資格
  • 日本専門医機構リハビリテーション専門医
  • 日本リハビリテーション医学会指導医
  • 日本脳卒中学会専門医
  • 日本義肢装具学会専門医
  • 日本臨床神経生理学会専門医(筋電図)
  • 日本臨床神経生理学会専門医・指導医(神経伝導検査・筋電図)
医師コメント

「痙縮」は動作を阻害するだけでなく、筋のこわばり、痛みなどの不快感を伴います。また長期経過によって関節の可動範囲を著しく狭めてします。これにより、可能だった動作や歩行が困難になり、介護者の介助が増大する、手足の衛生が保てなくなるなど、様々な生活上の問題を引き起こすことがあります。当外来では、これらに対する予防、治療の手段として、ボツリヌス療法のみならず装具療法も併せて行うことができ、適応がある方にはその効果をより高めることがで期待できます。

まずはお気軽に来院いただき、ご希望をお聞かせください。

認定資格
  • 日本専門医機構リハビリテーション専門医
  • 日本リハビリテーション医学会指導医
  • 日本脳卒中学会専門医
  • 日本義肢装具学会専門医
  • 日本臨床神経生理学会専門医・指導医(筋電図)
  • 厚労省義肢装具等適合判定医
  • 身体障害者福祉法第15条指定医
医師コメント

2023年4月からリハビリテーション科専門外来(ボツリヌス療法、高次脳機能障害)を中心に担当しています。これらの専門外来については当該項目のバナーをクリックして診療内容をご参照下さい。評価、診断、治療につい相談を希望される場合は遠慮なく受診ください。なお、ボツリヌス療法、高次脳機能障害以外にも、リハビリテーション全般に関して生活、仕事のことでお困りのことがあればお気軽に来院いただけます(電話で予約をお取りください)。