透析センター
血液透析のあれこれ
どうしてもシャントができないときは、どうしたらいいの?
これには2つ方法があります。
ひとつは動脈の表在化、もうひとつは、長期留置カテーテル埋込です。
動脈の表在化
通常、厚い脂肪組織に入り込んでいるため、深部の血管は皮膚の外見上からは確認もできなければ、触れてもあまりよく分かりません。触れたとしても位置が深いので、穿刺すると痛いし、うまく入ることが容易ではないので血腫を形成しやすいかと思います。しかしこうした血管を、脂肪層の上に出して、皮膚のすぐ下に位置させることで、容易に血管を触知し、穿刺することが可能です。これを「表在化」と言います。
糖尿病で血管が荒廃した方や、シャントを作成するには心負荷が気にかかるという方に適応します。
表在化の手術で最も気を使うのが、どこまで上腕動脈を剥離したらいいのか、ですが、少なくとも10cm以上の剥離をして初めて5cmほどの穿刺部位が得られます。側副血行路をつぶさないようにできる限り剥離するのがポイントです。
上の写真は、動脈の表在化と、伴走静脈も一緒に表在化としています。
表在化した静脈は、いくら血流を多く流したとしても、組織と癒着をするのであまり太くは発達しません。
また血管を止血するのに必要な組織が、皮膚直下の位置にあるので薄いです。だから止血はしっかりと行わないと血腫形成を起こしやすいので、その点は気を付けましょう。
長期留置カテーテル埋込
シャントが使えない状態で透析を行うには、一般的には下の写真のように短期留置型透析用カテーテルを挿入します。一番挿入しているのが、右内頸静脈です。
右内頸静脈が選ばれるのは、鎖骨下静脈だと血栓性閉塞するリスクが高く、大腿静脈は感染の危険が高いからです。しかも左側の内頸静脈は右、心房にカテーテルが行き着くまで2回ほど屈曲するので、カテーテルが血栓性閉塞するリスクが右側より非常に高くなるのです。
当院では血管エコーで内頸静脈の位置を確認して、透視室でカテーテル挿入を行います。あらかじめ位置を確認しているので、この方法が一番安全でかつ時間も短く手技を終わらせることができます。
カテーテルは血液回路と接続するだけなので、穿刺痛のような痛みはありません。しかしこのまま長い期間にわたってカテーテルを挿入していると、それこそ感染症へと発展してもおかしくはないのです。
そこで、できるだけ感染のリスクが少なくなるように、しかも身体の中に埋め込むことで、抜けないよう長期にわたって使用できるようにしたのが、「長期留置カテーテル」なのです。
左の写真が、身体に埋め込んだ長期留置カテーテルです。右内頸静脈より挿入されており、右鎖骨のあたりから出口部が形成され、ここよりカテーテルが外に出ています。このカテーテルはMedcompというものです。
右の写真が、Permcathという長期留置カテーテルです。こちらは左のものよりやや硬いですが、耐久性はいいです。
カテーテルがどれくらい長持ちするかは個人差が大きく、年単位で維持できる方もいれば、数か月でカテーテル交換が必要になってくる方もいます。
カテーテルが感染しないように、閉塞しないようにと毎日カテーテル管理が必要なのですが、家族の協力が得らえれば、この状態で外来通院することも可能です。
上の写真は、血栓で閉塞した症例です。こうなると交換しかありません。そのうちにこの血栓塊を培養として細菌感染が起こることもあります。
透析の方は、免疫能力が低いことが多いので、皮膚の表面にいる表在ブドウ球菌というものにも感染することがあるのです。シャント感染も、この菌が原因であることが多いです。
他にも、緑膿菌やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)があり、難治性となります。
抗生物質の投与にも、腎機能を考慮した薬剤の選択、投与量や投与方法で行わないと、副作用による弊害が起こります。
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