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透析センター

血液透析のあれこれ

では、自分の血管でシャント造設が難しかったらどうしたらいいのでしょうか?

二つ方法があります。

一つは、人工血管による内シャント造設、もう一つは長期留置カテーテルの埋め込みです。

最初に人工血管による内シャント造設について話します。

人工血管には大きく3タイプがあって、それぞれに特徴があります。

どちらにせよ人工血管ですので、自家血管より感染に弱い、とうのが最大の欠点です。しかし、感染する方のほとんどが、穿刺部位を清潔に保てていないことが原因で、逆に言えば、清潔を保つようにすれば、感染なんぞ恐くないということです。

最大の長所は、どんなに離れた動脈と静脈の間も、人工血管はつないでくれるということではないでしょうか。

自家血管はあまり動脈と静脈の間の距離が長いと、血管吻合において引き攣れが起こりやすく、吻合部の角度によっては、カテーテル治療の際に挿入しづらくて修復しにくいだろうし、吻合部の引き攣れ部分に血栓形成が生じやすいといった不都合がみられやすくなります。

しかし、人工血管は、最適な動脈と、吻合したい静脈が離れていても、自由な配置で互いを吻合することができます。糖尿病の方に多く見るのですが、自家血管が次々と荒廃してシャントとして使用できなくなる、そんなときに人工血管を利用することを考えれば、シャントの選択肢は広がります。

右の写真は、前腕の上腕動脈と上腕の尺側皮静脈を人工血管でシャント造設としている当院での手術風景で、左の写真は、前腕の上腕動脈と前腕の橈側正中皮静脈を人工血管でシャント造設としている当院での手術風景です。

[写真]
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赤いテープがかかっているのが動脈です。青いテープは静脈です。両者とも皮膚の上に青いマーカーでループを描いています。ここに人工血管が走っているのです。このループ状の部分が穿刺できるところなので、かなり広範囲に穿刺することが可能となります。

下の写真は、当院の得意技です。

肘にかかる部分は、曲がるのに適している人工血管(Gore-Tex)を使用し、穿刺する部分は、穿刺しやすく止血しやすい人工血管(THORATEC)を選んで、互いを吻合して、1本の人工血管として使用するのです。

これをコンポジットグラフト(Composit Graft)と呼んでいます。

[写真]
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段差が生じないように均等に吻合して…

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最終的に1本の人工血管として、シャント造設を行いました。

だいたい人工血管は直径が5mmまたは6mmの筒になっていて20cmと40cmと2種類の長さがあるのだけど、前腕の肘から上腕の内側までループを描くと60cmぐらいになるので、人工血管を足し算して使用すると都合がいいのです。

人工血管同士も通常の血管も、縫い目を均等に、少し緩く縫合すると出血することはまずありません。

[イメージ]

左がGore-Tex、リングが付いているので屈曲に強いです。
右がTHORATECで、穿刺しやすく止血しやすい印象です。