整形外科
当院整形外科の東山礼治医師が考案した、新しい足首の内側の靭帯を治す手術手技(ARATTL)がビデオ付きの英語論文に掲載されました。
前脛距靭帯ATTLを治す手術(再建術)です。インターネットで調べた範囲では世界初の報告となります。どなたでもご覧になれますので、以下のサイトからアクセスして下さい。
個人情報を省いておりますが、実際の手術動画ですので苦手な方は文章だけをご覧下さい。
https://www.arthroscopytechniques.org/article/S2212-6287(20)30004-9/fulltext
「足首の捻挫は、うち返し捻挫(回外捻挫)が有名ですが、そと返し捻挫(回内捻挫)や外旋(がいせん)捻挫も起こります。サッカーなどでスネの外側からタックルを受けて倒れたとき、ラグビーのスクラムで崩れたとき、スキー板をはいた状態で外側に板がねじれたとき、ぬかるんだ斜面を斜めに上がっている時につま先が外側にすべったときなどです。また、過去の捻挫によって、足首の外側の靭帯がゆるくなっている人は、内側も徐々にゆるんでくることも言われております(足関節回旋不安定症)。また扁平足の人では徐々に内側の靭帯が伸びてしまいやすいです。
足首が不安定な人に手術をする場合、つい外側の靭帯ばかりが注目されますが、内側の不安定性(ゆるさ)も忘れてはいけません。これまで内側の靭帯を治す手術方法は大きな傷口を用いた方法(観血的手術)が一般的でした。小さい傷でおこなえる内視鏡手術も、切れて弱った靭帯を縫い寄せる修復術だけが報告されておりました。しかし、足首の内側靭帯(三角靭帯とも呼ぶ)は皆さん同じではありません。前脛距靭帯ATTLは63%の人に存在すると言われており、全ての人に存在する靭帯ではありませんので、実は縫い寄せる修復術がそもそも不可能なことがあります。
このARATTLという手術は、内視鏡(関節鏡)で前脛距靭帯ATTLを再建しますので、修復術より強いだけでなく、少しの小さい傷で可能です。外側の靭帯の手術に追加する場合は、内くるぶしのすぐ下の位置に、たった1cmの傷を1つ追加するだけで可能になります(ビデオ参照)。これにより、足首の内側の前方がとても安定し、そと返しや外旋に強い足首になります。ARATTL(アラトル)とは Arthroscopic Reconstruction of ATTL(前脛距靭帯)の略ですが、「A:~ない」「RATTLE:ガタガタする」を合わせて、「ARATTL = ガタガタいわない」足首に治したいという発想・想いから名付けました。
スポーツの盛んな湘南、茅ヶ崎エリアだけでなく、世界には多くの患者様が捻挫の後遺症で苦しんでおります。海外の医師や患者様に知って頂くことで、少しでも皆様のお役に立てればと考えております。日本語論文では無料で皆様がご覧になれるものがないため英語であることをご容赦下さい。
名誉なことに、以下の論文に本術式(ARATTL)が引用されております。
2020年7月にイギリスのキングス・カレッジ病院 (Osarumwenseら, Kings College Hospital)から発表された総論論文で、「未来形の(最新の)足関節鏡手術」として紹介されました(引用文献62番)。
https://jassm.org/recent-advances-and-future-trends-in-foot-and-ankle-arthroscopy/
2021年4月にインドのサンシャイン・グローバル病院(Shahら, Sunshine Global Hospital)が発表した総論論文に引用されました(引用文献36番)。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8046858/(どなたも閲覧可能)
2023年6月のカナダのブリティッシュ・コロンビア大学(Loozenら, University of British Columbia)の総論論文に引用されました(引用文献11番)。
https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/10225536231182345(どなたも閲覧可能)
なお、東山医師考案の他の手術方法も、当院のお知らせコーナーに紹介されておりますのでご参照ください。
東山医師は2020年4月より茅ヶ崎中央病院で診療を開始しております。
担当医師紹介
東山 礼治 ひがしやま れいじ |
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整形外科部長 | |
資格・提携 |
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所属学会 |
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医師コメント |
2001年 筑波大学卒、2009年 千葉大学大学院博士課程修了、2011年~ 北里大学整形外科助教 |